
日商簿記検定の2級は、平成28年6月の試験~平成30年6月の3年間にかけて、出題区分の大幅な改正が行われました。
この記事では、簿記2級の出題区分の改正内容を簿記講師が解説します。
ちなみに、日商簿記2級は商業簿記と工業簿記の2科目がありますが、今回変更されたのは商業簿記だけで工業簿記は変更の心配はありません。
出題区分の変更の概要
出題範囲の追加について
日商簿記2級の「商業簿記」に新しい論点が追加されます。
以前は、新しい論点があると1級に追加されるのが恒例でした。そのため、1級の出題範囲はかなりボリュームがあり、2級の範囲と大きく差が開いている現状がありました。
1級に追加されていた、これらの新しい論点の中でも、一般的な中小企業で必要とされる知識があります。
そういった実務で求められやすい論点が。1級から2級に段階的に追加されるようになっています。
ただ一度に追加すると、受験者の負担になるため、「平成28年度」「平成29年度」「平成30年度」の3年間にわたり段階的に追加されました。
改正前と比べて、ボリュームが大きく増えています。
簿記2級の改訂で追加された論点
本文を入力
有価証券
クレジット売掛金
手 形
電子記録債権
「販売のつど売上原価勘定に振り替える方法」による商品売買の記帳
6有形固定資産の割賦購入
ソフトウェア
サービス業を営む会社の会計処理(役務収益・役務費用)
収益(・費用)の認識基準
貸倒引当金の個別評価・損益計算書上の表示区分
株主資本の計数の変動
課税所得の算定方法
圧縮記帳(直接控除方式のみ)
リース取引の借手側の会計処理・表示
外貨建の営業取引および外貨建売上債権・債務の決算時の換算
連結会計(その1:資本連結)
連結会計(その2:連結会社間の取引・未実現損益の消去)
連結会計(その3:連結精算表および連結財務諸表の作成)
追加になった論点の名称を見ても・・・分かりにくいですね。
そこで、追加になった論点の中から特に重要な論点について、かみ砕いて分かりやすく説明します。
外貨建取引
企業の中には、日本国内の企業と取引するだけでなく、海外の企業と取引をしている会社も多いですよね。
例えば、アメリカで購入した商品を日本で販売している会社を想像してみてください。
日本の通貨は「円」ですが、アメリカの通貨は、もちろん「ドル」ですよね。
ただ、皆様もご存知の通り、ドルと円は常に同じ価値でやり取りされるわけではなく、為替相場は日々変動します。
「1ドル100円」で取引ができる時もあれば、「1ドル110円」の時もありますよね。
このような取引の時に、どのような処理をするのかというのも学習するのが外貨建取引です。
リース取引
「リース」という言葉は、多くの方が聞いた事があると思います。
あなたが所属している会社は、営業車両やパソコンを購入していますか?
リース会社から借り入れて利用している会社も多いと思います。このような、リース取引は、実際に多くの会社で利用されています。
しかし、リースで固定資産(車両やパソコンなど)を借りるときは、購入したときと違う「リース取引」の処理が必要です。
現在多くの会社では、リース会社から固定資産を借り入れて使用するケースが増えてきているため、このリース取引の処理が検定試験でも追加になりました。
連結会計
これは、企業が「親会社」と「子会社」に分かれているケースで必要な知識です。
「親会社」も「子会社」も、それぞれに決算書(財務諸表)を作りますが、第三者からすれば、両方を合わせたグループ全体の状況もが知りたいですよね。
そこで企業は、「親会社の決算書(財務諸表)」と「子会社の決算書(財務諸表)」を合算した「連結財務諸表」と言うもの作成します。
その時に必要な知識が連結会計です。
出題範囲の削除について
2級に、新しい範囲が追加される説明をしましたが、一部削除された論点もあります。
従来の範囲の中で、実際に実務ではあまり使われていない知識もありました。そういったものは、平成28年6月の試験より削除されていますので学習は不要です。
出題範囲改訂の意図
試験の改正の話をすると、多くの受験者からは嫌な顔をされます(^^;)
2級の勉強が従来より大変になることは明らかなので、誰だって嫌ですよね。
正直に言うと、私たち簿記講師も今回の改訂はかなりの衝撃でした。教える立場もさらに勉強し、工夫していかなければなりません。
ただ、今回の改正は「実務で求められる知識(論点)の追加」「実務であまり使われない知識(論点)の削除」が行われるため、日商簿記2級が今まで以上に役に立つ、実践的な資格になったといえます。
その分、2級の取得は今まで以上に価値があるものになるでしょう。ぜひ、取得を目指して頑張って下さい!
日商簿記2級の今後の学習のコツ
試験範囲が平成30年にかけて毎年変更になっているので、テキストは必ず新しいものを使用しましょう。
大手の簿記の学校であれば、年度に対応した新しい教材が扱いされていますが、小規模の学校や教室は要注意です。
新しく追加された論点は、もともと1級の論点ですが、簿記講師は1級を取得していない方も多く、知識不足の講師も出てくるかもしれません。
その点からも、簿記2級の講座やテキストを選ぶ場合は「大手」と呼ばれる学校を利用した方が確実でしょう。
試験改訂に対応した簿記2級のおすすめ講座に関しては、「簿記講師が教える、日商簿記2級のオススメ講座ベスト3!」の記事で詳しく紹介しています。

